こんにちは。kazuです。
今日も皆さまお疲れ様です。久しぶりの投稿になります。
今回は臨床に関する質問がありましたのでお答えさせていただきます。
「こんにちは。いつもブログを拝見させていただいています。
今年、急性期の病院に作業療法士として入職しました。
しかしこんな質問をしてしまって恐縮なのですが
臨床に出てからわからないことばかりで、正直、いまの担当患者様にどんな介入のプログラムを立てていけばいいのかわかりません。
kazuさんはいま作業療法をしていっている中で、どのように考えて、どのように介入していっているのでしょうか?」
今日は作業療法の介入プログラムを立てていく上で、基本的な考え方について解説します。
①評価

なぜ健康的な生活が送れていないのかを評価する
どの疾患でも同じですが、患者様が医療機関を利用している以上、健康上の問題が生じているから利用しているのだと思います。
そうであれば、まず介入を行う前に、その患者様がなぜ健康的な生活を送ることができていないのかを先に評価しましょう。
その際に大事なのは、その患者様にとって健康的な生活とは何かをできるだけ具体的に理解することです。
僕の評価の具体例ですが
まず1枚の白紙を持ってきて、患者様またはご家族から、以前の健康的だった生活の大まかな1日の流れを1~2時間ごとに区切って書きながら、直接聴取します。
1日の流れを聞く際、具体的にどんなことをして過ごしているのかも、できるだけ詳しく聴取しましょう。
できる必要がある生活行為を挙げてみる
患者様にとっての健康的な生活を具体的に評価出来たら
次に現在の生活とのギャップを比べてみて、患者様と話し合いながら今後できる必要がある生活行為を挙げてみます。
ここで患者様にとって、健康的な生活を送る為に特にできる必要がある生活行為を列挙していきましょう。
そしてできるようになるべきことに優先順位をつけていきます。
これは患者様または他職種とも相談しつつ、決めていきます。
できる必要がある行為とは本当に患者様によってさまざまです。
例えば
身の回りのこと(トイレ、整容、化粧、入浴、着替え、服薬、睡眠…)
家事・育児(料理、洗濯、掃除、ゴミ捨て、子供を抱っこする…)
仕事(金銭管理、通勤、運転、畑仕事、部活動、学校に行く…)
趣味(散歩、スポーツ、楽器演奏、読書、料理、友人と交流、将棋…)
などなど…
特にトイレや着替えなどのセルフケアは、人の尊厳にも大きく関わる行為なので、できるようになることへの必要性が高いように思われます。
また患者様が20~50代と比較的若い年齢であれば、仕事に関連する生活行為もニーズが高い可能性があります。
できる必要があることの優先順位を決めていくのに便利な作業療法評価のツールとしてCOPM、MTDLP、ADOCがあります。
よければ参考にしてみてください。
可能なら、なぜその生活行為ができておく必要があるのかを患者様視点で聴取しておきましょう。これが介入プログラムを決めていく上で重要な根拠となります。
なぜその生活行為ができていないのかを評価する
できる必要がある生活行為の優先順位をつけたら、その生活行為がなぜ患者様はできていないのかを評価します。
ここで基本的な考えとして
生活行為(=作業遂行)を人・環境・作業の要素に視点を広げて評価することをお勧めします。

作業遂行とは3つの円が重なり合う部分、つまり人、環境、作業の相互交流の結果であることを示す。
出典:作業で語る事例報告 作業療法レジメの書き方・考え方 編集/齋藤佑樹
例えば「トイレに自分一人で行きたい。」との訴えがあれば
人:生活行為を妨げる疾患は何か?トイレに移乗する筋力は備わっているか?トイレに行きたいと思う生理的欲求のタイミングは合っているか?…
環境:自室からトイレまでの距離はどのくらいか?トイレ室内に必要な道具は設置しているか?より簡単に行える為の道具が必要か?…
作業:トイレに行くことの特にどの部分が難しいのか?トイレに行くという行為で工夫できるポイントはあるか?…
といったように評価していきます。
できない要因ばかりを評価するのではなく、患者様の長所を見抜くことの方が重要です。この長所を生かすようにして、実際に介入プログラムへ進んでいきます。
②介入

介入する際のリスク管理を考える
一通りの評価が終わったら、実際に介入に移ります。
その前に介入する際の意識しておくべきリスク管理について事前に洗い出しておきましょう。
血圧、脈拍、呼吸状態、SPO2、栄養値、転倒リスク、点滴の位置、安静度等々…はカルテなどを参照し、事前に考えられるリスクを総ざらいしておきましょう。
どうやったらできるのかを考えてつつ、実際にやってみる
介入する際のリスクを想定したら、安全の範囲内でできる必要がある生活行為を実際に行ってみます。
ここでできる必要がある生活行為を妨げる問題点をさらに抽出していきましょう。
さらに必要な介入を考えて行ってみる
抽出した問題点があれば、それを改善できるようなアプローチを考えます。
ここでも人・環境・作業の視点で介入プログラムを考えていきましょう。
例えば「トイレに自分一人で行く」という行為ができなかった場合
人:トイレへの移乗の際にバランスを崩してしまう⇒方向転換に必要な下肢筋力向上訓練を行う…
環境:トイレに移乗する際に車椅子のアームレストが邪魔になる⇒車椅子をアームレストを引き上げられるタイプに変更…
作業:トイレに間に合わず失禁してしまう⇒2~3時間ごとに時間を区切って、尿意を感じる前に定期的にトイレに行くようにする…
といったように、挙げられた一つ一つの問題点に対するアプローチを行います。
ここでは弱点を補うアプローチばかりではなく、長所を生かして生活行為に結び付けられるようなアプローチも考えていきます。
例えば
・片麻痺の後遺症があるが、右半身の筋力はしっかりしている⇒右半身の力を利用して動作ができるかも…
・認知機能は保たれている⇒口頭指導による動作定着が期待できるかも…
・介護認定がある⇒トイレ動作を楽にできる福祉用具が今後利用できるかも…
といったように可能性を考えていきます。
あとはひたすら①評価⇒②介入⇒①評価⇒②介入⇒…の繰り返しです。
このようにして、患者様の望む生活行為の獲得に向けてアプローチを展開していきましょう。
まとめ
新人作業療法士にとっては、すべてが初めてのことばかりで戸惑うことも多いかと思います。
ですが、ここで焦らず、目の前にある課題を一つずつクリアしていって、着実に一歩ずつ進んでいきましょう。
担当している患者様に一人一人丁寧に向き合い、誠意をもって対応していくことによって、おのずと作業療法士として成長していくものだと思います。
これからも同じセラピスト同士ですから、お互い支え合って進んでいきましょうね。