【適応障害】になって見えた世界 その4

もうこんな職場…辞めよう…

仕事で大きく挫折をして、やっと立ち直りかけていたところに

信頼していた上司からの言葉でまた大きく傷ついて。

悲しみと怒り、焦りと失望。

様々な負の感情が入り交ざり、自分の身体を支配していきました。

両親は時折、なぐさめてくれるような言葉をかけていましたが

もはや自分には何も聞こえませんでした。

日が経つにつれ、ますます抑うつは悪化。

もう一度心療内科に通って薬を貰って服薬し

副作用による倦怠感と戦いながら眠れない夜を繰り返していました。

眠れない夜を過ごして朝が明けるたびに感じる絶望感。

重い身体を動かして起きればもう外はすでに夕方。

世の中に何も貢献せずただ生きているだけの自分に罪悪感を感じていました。

そしてこんな自分が今を生きている姿を世の中の人に見られたくない。

自分が苦しんでいることなんて知られたくない。

友達からくる食事の誘いや遊びの誘いも断り

次第に身近な人でさえも関わらなくなりました。

そしてまたやってきたあの感覚。

自分一人が世間から置いていかれている…

二度と味わいたくなかったのに…

そんな中、兄が実家に帰省するとの連絡が入りました。

兄が帰ってくるとなると

両親はいつも兄の帰省の為に、たくさんの美味しい料理を作ります。

いつも実家は賑やかになります。兄はそんな人柄です。

夜になって兄が帰ってくると、両親は作った料理をテーブルに出して

家族は久しぶりに兄と一緒に食事をしました。

僕は今まで、自分が苦しいことを誰にも話すことができず

ひたすらその苦しみを押し殺していました。

今の自分の情けない姿を相談なんてできない。

自分のことで誰にも迷惑かけたくない。

両親でさえ、今更苦しいから助けてくれとは言えず

日に日に自分の存在に罪悪感が増すばかりの日常でした。

しかし兄は違いました。

僕は小さいころからの兄を知っています。

ここで兄の過去に関する話になりますが

兄は家族の中でいつも長男というプレッシャーと闘っていました。

兄が小さい頃、両親は一家の長男という期待を込めて兄に厳しく接していました。

兄に様々な習い事をさせました。

しかしどんな習い事もうまくいかず、長くは続かず

むしろ兄はそんな家族に対して反発心を持つようになり

兄は強い敵意を持って次第に家族と関わらなくなってきました。

そして兄の近くには常に姉がいました。

年はあまり離れていないものの、兄にとっては年上である長女。

長女は高校受験で有名な進学校に合格して、大学も旧帝大に現役で合格するなど

まるで兄弟のお手本となるような人でした。

兄は高校受験に失敗し、大学受験も失敗。

特に大学受験に関しては

兄はこれまでの失敗を取り戻したいと思わんばかりに猛勉強しました。

そんな兄の姿に周りの人からも大きく期待されながらも結果は不合格。

身近な姉との差を現実に突きつけられ

自分の存在という強い劣等感を常に感じながら生きていました。

兄はかつて数々の凄まじい努力をして、挫折をして

もう一度死に物狂いで頑張ったのに上手くいかなくて。

僕だったら到底耐え切れない失敗をたくさん経験した過去がありました。

そんな兄を僕は小さい頃から知っていました。

喧嘩もして一緒の家に住んでいてもお互い一切口を聞かなかった時期もあった。

それでも心の奥底には兄の存在を頼りにしていた自分がいました。

そんな兄だからこそ、僕は話しました。

本当に苦しい…

過去にあったいきさつを兄に全て説明しました。

重苦しい雰囲気の中、両親は黙って聞いていました。

「今死ぬほど苦しいよな。」

兄は口を開きました。

「もう知ってると思うけど、俺は高校受験も大学受験も失敗して

それで受かった大学も、大学生も周りとの熱量に挫折して留年もしたし。」

「留年していた日なんかいっそのこと死のうかなって思ったし。」

「あの時は本当に苦しかった。」

「けど今思えばなんだけど」

「あの時留年して苦しんだ2年間は、今思えば俺にとって本当に必要な時間だったんよ。」

「今でこそ歯医者になって、自分の家庭にも恵まれて

親や兄弟、友達にも恵まれてると思えるようになって」

「自分の仕事も楽しいと思えるようになったんだけど」

「それはあの時の苦しい時期があったからこそ気づけたものもあったんよね。」

「あの苦しい時期がなかったら、今の当たり前のような幸せに気づかないままだったと思う。」

「この当たり前な生活に幸せを感じないまま生きてたら

多分もっと不幸な生き方をしていたと思うんよ。」

「そしてkazuも今、それくらい大事な時期を過ごしているんだと思うんよね。」

「今もこうして俺はkazuの為に話を聴くことができている。」

「この話を俺にしてくれたのも、あの時に苦しんだ自分がいたからこそだと思ってる。」

「そうだと思うと、むしろあの2年間に感謝できるくらいやね。」

「だから大丈夫。今苦しいのは無駄じゃない。」

今苦しいと思っていることは、本当に大事なことなんだということ。

今苦しんでいることは決して無駄ではないこと。

それを兄は優しく語りかけてくれました。

なんで俺だけこんな苦しい思いをしなくてはいけないのかと苦悩していた日々。

けどそんな日々にもちゃんと意味があるんだよ、と優しく伝えてくれたような気がしました。

今苦しんでいる時期に希望を持たせてくれました。

兄とは小さい頃から喧嘩ばかりで

なんでこの人が自分の兄なんだろうと思ったこともあります。

しかしそこで初めて僕は兄が兄でよかったと感じました。

真っ暗だった世界に小さな光が差し込んだような気持ちがしました。

「今ほんとに苦しいよなぁ。」

兄は微笑みながら言ってくれました。

今まで美味しく感じることのなかった毎日の食事。

しかしこの時の食事は本当に美味しく、温かいものでした。

続く…

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