今回は
作業療法士とスポーツ分野の関わり
について解説します。
- 作業療法士になったらスポーツと関わりたい。
- スポーツと関わる作業療法って何?
- 作業療法士はどんな場面でスポーツと関わるの?
といった方がいらっしゃればぜひ参考にしてみてください。
今回は学生の方から質問をいただきました。
私は小さい頃から野球をやっており、怪我をしてリハビリと関わったことから
リハビリテーションに興味を持って作業療法士の道に進みました。
今までスポーツをやっていた経験から
将来セラピストになったらスポーツの分野にも関わりたい思いがあります。
しかしスポーツの分野は作業療法士ではなく
理学療法士が多く関わっているように感じるのです。
養成校で授業を受けても、陶芸や木工などスポーツとは縁の無いような内容ばかりで
正直今後の自分の将来が心配になっています。
ここで質問ですが、作業療法士はスポーツ分野と関われるのでしょうか?
質問者様は本当にスポーツが好きな方なのですね。
学生の内から自分の将来に対するビジョンが立っているのは
立派なことであると思います。
今回は僕の実体験を中心にお話します。
作業療法士はスポーツと関われる!
まず結論から言うと
作業療法士はスポーツと関われる機会はあります!
実際はスポーツと関われるかは
今後働く職場の特色によることも多いのですが
理学療法士だけでなく
作業療法士だってスポーツと関われます。

作業とは生活行為と同義であり
生活行為の中にはもちろん野球やサッカーなどのスポーツをすることも含まれます。
作業療法士は作業(=生活行為)を支援する専門職なので
生活行為の一部であるスポーツを支援することもあります。
作業療法士としてスポーツと関われた事例
ここでは
実際にスポーツと関わることができた経験
を中心にお話ししていきます。
僕は作業療法士として
以下の3つを実際の臨床現場で経験しました。
順番にお話していきますね。
好きなスポーツを通して心身を健康を取り戻した事例
大学病院で働いていたとき
急性骨髄性白血病を罹患した中学生の患者様を担当しました。
その中学生の患者様はサッカー部で主将を務めていた子でした。

その子は白血病で免疫力は大きく低下しており
ウィルス・細菌から容易に感染症状を起こしてしまうため
主にバイオクリーンルームという隔離病室でリハビリを行っていました。
しかしその子は病室の隔離生活に気が滅入ってしまっており
好きなサッカーも出来ないため
誰とも話さなくなっているくらいに気落ちしている状態でした。
そこで僕は
と提案しました。
実際に抗がん剤治療で免疫力が回復し
リハビリ室へ入れるようになると
僕はその子とサッカーを通して心身機能向上のプログラムを提案しました。
怪我や感染に注意しなければならなかったので
練習は十分に消毒された狭い室内に限られましたが
その子と一緒に
- パスの練習をしたり
- リフティングをしたり
- 時にはその子からドリブルを仕方を教えてもらったり
このような関わりをしました。
その子はサッカーを通して次第に活気を取り戻し
つらいことばかりだった病院生活が
次第に楽しいと思ってもらえるようになりました。
その子は目を輝かせながら
「絶対に良くなってまたサッカーをしたい。
体力が落ちてしまっても今度はサッカーを教える側になりたい。」
と力強く語っていました。
実際にサッカーを通して基礎体力が上がり
数回の抗がん剤治療にも耐えられるようになって
治療は無事終了しました。
その子が実際に病気を克服して退院日を迎えた時は
笑顔で僕に握手をしてくれました。
このように
スポーツという作業を使って患者様の心身の健康を促す
ことも作業療法士の仕事の一つです。
スポーツをして怪我をした人に対するリハビリ
現在僕が勤務している病院での一例です。
今働いている病院では整形外科分野の主治医が数多く在籍しており
整形疾患に対するリハビリオーダーが作業療法士にも処方されます。
その中で
スポーツをしていて怪我をしてしまった方々への作業療法も行います。

例えば
こうした方々に
- 関節可動域訓練
- 筋力増強訓練
- 疼痛緩和のリラクゼーション
- 超音波療法などの物理療法
などのリハビリテーションを提供します。
作業療法士は
こうした肩から腕・手にかけての怪我に対して多く関わっています。
中には
野球のピッチャーをしている高校生の投球動作を分析して
正しい投球動作の指導を行っている作業療法士もいます。
「スポーツ」という作業を細かく分析して患者様の身体を評価しつつ
どうやったら本人の望むスポーツへ復帰ができるかを考えて介入していく
これらも作業療法士の仕事の一つです。
精神疾患を持った人々に対する発散の一助として
これは僕が学生だった時に作業療法の臨床実習中に経験したことです。
当時はある精神科病院のデイケアに長期間実習に行っていました。
デイケアには
- 統合失調症
- 躁うつ病
- パーソナリティ障害
と慢性的な精神疾患を罹患されている方々が数多くいらっしゃいました。
デイケアに参加していた人たちは、退院したものの
といった悩みを持っていました。
そのような方々の生活を援助する一つとして
そこで勤務されていた作業療法士の方が
デイケア独自のソフトボールチームを運営していました。
僕も実際にそのソフトボールチームに参加し
他の病院のソフトボールチームと一緒に試合をした経験があります。
結果は20対0と惨敗でした(笑)
しかしソフトボールに参加していたデイケアの方々は
試合後に爽やかな笑顔で健闘を共有し合っていました。
😊<「負けたけど思い切りのいい負け方だった!」
😊<「初めてヒットが打てて嬉しかった!」
と普段見せない笑顔がたくさんありました。
このように一緒にスポーツという作業を用いて
汗をかいて日々のストレスの発散ができたり
一緒にスポーツをしている仲間同士のコミュニケーションを楽しむ場を提供できたり
つまり
スポーツを通して健康的な日常生活の一助とする手段
として作業療法が行われることがあります。
まとめ
- 作業療法士はスポーツと関わることができる
好きなスポーツを通して心身を健康を取り戻した作業療法の事例
スポーツで怪我をした人に対するリハビリとしての作業療法
精神疾患を持った人々に対する発散とコミュニケーションの一助として
作業療法士は
作業=生活行為を評価・支援して
クライエントの健康的な生活をサポートする
という専門職です。
その中で
ことももちろんあります。
クライエントの大切な作業がスポーツなのであれば
そのスポーツを再び行えるように支援することだって当然あります。
総じて作業療法士はスポーツと関わることができます。
もし質問者様がこのような機会に携わるようなことがあれば
自分の経験してきたスポーツに対する知識や考え方
それが同じようにスポーツをやっていた患者様にとって
役に立てる立派な長所になるかもしれませんね。
そうなればきっと作業療法士として
自分の仕事にやりがいを感じていることでしょう。
自分の好きなスポーツを通して、他者の役に立てることができる。
仕事をする上でこれほど楽しいことはないと思います。