心は一種のバイオリズム。
なんとなく調子がいいなって感じる日もあれば
今日はなんだか気持ちが上がらないって日もあるはずです。
心の調子が悪い日って何をするにもマイナスな気持ちになって
どうにもうまくいかなくて、きっと悩んでいる人も多いですよね。
現在、訪問作業療法士としてメンタル疾患の方々の在宅生活をサポートしていますが
心が疲れている日を過ごすにはいくつかのポイントがあります。
今回は
メンタルの調子が悪い時の在宅生活のコツ
について解説していきます。
生活リズムを一定にする
まずは
毎日できるだけ決まった時間に食事・運動をして寝ること。
むしろ当たり前のようなことだからこそ重要です。
体の調子が良いと感じられる要因の一つが脳内の神経伝達物質であるセロトニン。
このセロトニンは規則正しい食事・運動・睡眠で分泌されます。
ちなみにセロトニンの分泌は
- 太陽の光を浴びる
- リズム運動を行う
- 腸内環境を整える
これらの行動で促すことができます。
腸内環境は納豆やキムチ、ヨーグルトなどの発酵食品を食べることで整えることができます。
つまり
早起きして朝に散歩を行い、朝食としてヨーグルトや味噌汁などの発酵食品を食べる
これらの行動でセロトニン分泌を促すことができます。
また朝に分泌されたセロトニンは夕方の時間帯になるとメラトニンに変わります。
このメラトニンは入眠の質をよくする神経伝達物質でセロトニンを材料とします。
セロトニンがメラトニンに変わるのはおおむね15時間前後と言われています。
セロトニンを材料に夕方から睡眠物質のメラトニンが作られます。セロトニンが十分に分泌されることで、15〜16時間後にメラトニンが分泌されて、結果、夜の睡眠が深まるのです。
出典:精神科医が教えるストレスフリー大全|樺沢紫苑(ダイヤモンド社:2020/7)
早い時間帯にセロトニンの分泌を促しておくことで眠りやすくなり
そして早い時間帯に眠ることができれば、もう一度早起きして食事・運動を行うことができます。
こうして決まった時間に食事・運動・睡眠をとることで
セロトニンを分泌し続けるサイクルを作ることができます。
なので生活リズム一定にすることで少しずつ体の調子を良くすることができるんですね。
当たり前のようなことだからこそ大事なんです。
夜が自然と眠たくなるコツ
夜が自然と寝られるようになるコツは
寝る2〜3時間前から眠りやすい環境を整えておくこと。
例えば僕は
仕事から帰って家に着くとシーリングライトは点けずに間接照明だけ使用します。
そしてテレビやスマホ、シーリングライトから発するブルーライト。
これらは脳を覚醒させてしまうため、睡眠の質を下げてしまいます。
なのでテレビもスマホも見ないようにしています。
そして家に着いたらすぐに入浴を済ませておくようにします。
書籍「スタンフォード式最高の睡眠」によると
良質な睡眠には深部体温を下げて、皮膚温度との差を縮める必要があります。
深部対応は上がった分だけ大きく下がろうとする性質があり、入浴で深部体温を上げれば
その後、深部体温の下降が大きくなり熟眠につながると言われています。
上がった深部体温が元に戻るまでの所要時間は90分。つまり寝る90分前に入眠を済ませておけば、深部体温が下がっていき、皮膚温度との差も縮まり、スムーズに入眠できるということだ。
出典:スタンフォード式 最高の睡眠|西野精治(サンマーク出版:2017/3)
なので仕事から帰ってきたらすぐに入浴を済ませて
あとは部屋を暗くしてブルーライトを浴びずに自然に眠くなるような環境を整えること。
これだけでスッと眠れやすくなるはずです。
ストレスとリラックスを整える
次に紹介したいのは
1日の中でストレスとリラックスを整えること。
心の調子の多くは内臓の動きを制御する自律神経が関わっています。
自律神経とは交感神経、副交感神経の二つで成り立っており、簡単に説明すると
- 交感神経→体を活動的にさせる
- 副交感神経→体をリラックスさせる
という役割があります。
書籍「結局、自律神経がすべて解決してくれる」によると
体がもっともよい状態は、交感神経も副交感神経も、両方高いレベルで活動していることが重要です。慢性的に体に不調を抱えていらっしゃる方々は、おそらくどちらかの神経が低レベルなのだと考えられます。
出典:結局、自律神経がすべて解決してくれる|小林弘幸(株式会社アスコム:2021/7)
とあるように
交感神経・副交感神経の二つがバランスよく機能することで良好な体調が維持されます。
ストレスが多いと、1日中交感神経優位となり
- 頭が冴えて眠れない
- 食欲がなかなか湧かない
- 免疫が下がって病気になりやすい
といった体への悪影響が出てきます。
反対にリラックスばかりに偏って副交感神経を高めすぎても
- 何もする気が起こらない
- 活動しようにも体が重く感じる
- 頭がぼーっとして集中できない
といったデメリットがあります。
なので大事なのは
1日の中でストレスを感じる時間とリラックスする時間をバランスよく取り入れることです。
もし在宅療養をしているなら
- 明るい時間帯は外出して図書館などの人がいるところに行く
- 暗い時間帯は家にいて読書などのリラックスする時間を設ける
このようにしてメンタルのバランスを整えてみてもいいかもしれません。
ちなみに僕の場合ですが
まず平日の日中は会社での仕事に集中します。
休日はよく外に出て図書館や書店などの人がいる場所に足を運びます。
そして家に着いてから夕食と入浴を済ませると、あとは寝るまでリラックスする時間と決めています。
仕事や外出で十分に交感神経を高めたら、夕方以降は
- 図書館で借りてきた本を読む
- Bluetoothでヒーリングミュージックを流す
- ルームフレグランスで部屋を心地よい香りにする
- 暖かい白湯を飲んで内側から温める
このようにして副交感神経を高める行動をしています。
(不安を煽るようなニュースは反対にストレスを高めるので見ないことに決めています)
こうしてストレスを感じるタイミングとリラックスを感じる場面を
1日の中でバランスよく整えるようにしています。
心のメリハリをつけるようにしています。
70%で明日に余力を残す
先ほど規則正しい生活をすすめましたが
絶対に規則正しい生活にしないと…
実はこう思ってしまうのもあまりよろしくない。
完璧にしようとする考え方もかえってストレスを増やしてしまいます。
僕は日頃から70%くらいの出来を心がけることをおすすめしています。
例えば先ほど解説した「ストレスとリラックスを整える」も
毎日絶対にそうしなくちゃいけない…と考えるのではなく
1〜2日くらいは自由に過ごしていい日にして余白を作っています。
もう少し具体的に言うと
1週間のうち5日は規則正しく生活して
残りの2日は調子に合わせて1日中ゴロゴロしてもいい日にする。
このようにしてみるとバランスがいいかもしれませんね。
楽しいことに時間を使う
ある程度、日常生活を整えた上で
なんか退屈だな…
こう思えてきたら上出来。心にエネルギーが増えてきている証拠です。
最後に
自分が心から楽しいと思えることに時間を使ってみる
ことをおすすめします。
それはお金にならなくても、特別でなくてもかまいません。
ただ自分が楽しいと思えることを自分に正直になって考えてみます。
例えば
- 何か文章を書いてみる
- ハンドメイドで編み物や縫い物をやってみる
- 自然を感じたり、海を見に行ったりする
- 好きな音楽を聴いたり、演奏したりする
- 美術に触れたり、何か描いたりしてみたりする
自分が楽しいと思える時間は「フロー」という状態を作ることができます。
「フロー」とはミハイ・チクセントミハイ教授が提唱した概念で
簡単に言うと、時間を忘れて熱中している状態を指します。
実際にフローの状態ではドーパミン、オキシトシン、ノルアドレナリンといった
幸福を感じる脳内物質の分泌が関わっていると示唆されており
ミハイ・チクセントミハイ教授も「フロー体験こそが幸福である」といいます。
ちなみに僕の場合は
- 行ってみたかったカフェでブログを書いてみる
- 図書館にいって満足するまで読書を楽しむ
- 好きな音楽を聴きながら外を散歩してみる
これらの行動が大好きですね。
しかしたとえ楽しいことでも
- タバコや飲酒でストレス解消
- ひたすら買い物をして浪費に走る
- 運動のしすぎで身体的に消耗する
これらは反対に健康を害してしまうのでおすすめはしません。
繊細な人ほどアートをおすすめする理由
日頃からいろんなストレスにあって心が疲れてしまうほど繊細な人は
ぜひとも芸術で自己表現してみることをおすすめしています。
哲学者のニーチェは
芸術は自分にとって『よいもの』を目指して表現する行為。『よいもの』を目指したいという精神的な欲求が生を肯定し、充実した現実を楽しむことができる。
出典:飲茶の「最強!」のニーチェ|飲茶(株式会社水王舎:2017/12)
とあるように、芸術を通して自己表現する機会が充実した時間を与えてくれます。
ちなみにこれは僕の経験上ですが、繊細な人ほど表現力がすごい。
訪問リハビリで出会うメンタル疾患を持っている方々はとても繊細な方が多いのですが
中にはプロのように作品を描いている方を見かけます。
繊細な人は感受性が高い分、きめ細やかな表現力に優れていることがあります。
なので繊細で感受性が高い人ほど
- 絵を描くこと
- 写真を取ること
- 音楽を演奏すること
- 何かを手作りしてみること
こうしたさまざまなアートに触れてみることをおすすめします。
思いもよらぬ才能に出会えるかもしれませんね。
まとめ
心の状態を良好に保つ上で一番大事なのは
調子が悪くても過ごせる我慢強さではありません。
むしろ自分の調子が悪いと感じられることです。
僕はよく訪問リハビリの業務で関わる利用者の方々へ伝えています。
書籍「精神科医が見つけた3つの幸福」でも
「日々の小さな健康」を感じとることが大事です。病気が重くなるほど、自分の症状や深刻さに気づけなくなる人が多いのです。だから「小さな不調」のうちに気付けることが大切です。
出典:THE THREE HAPPINESS 精神科医が見つけた3つの幸福|樺沢紫苑(飛鳥新社:2021/3)
とあるように、少しでも調子が悪いと感じることができたら
あとは自分なりに調子を上げられる方法を取ること。
つまり自分の違和感にいち早く気づいて対処ができること。
これが日々健康的に暮らす上で重要な力だと思っています。
よければ参考にしてみてください。
自分の心に正直に。